特に注目を浴びたのは、オリックスの若きスラッガー、イチローの快挙である
この年の6月24日、イチローはプロ入り3年目にしてシーズンの折り返し地点に入った時点での最速記録となる100安打を達成した
イチローは初回に二塁打を放つと、9回の打席では遊撃内野安打を放ち、この偉業を成し遂げた
「100本は信じられないこともない
積み重ねですから」と、彼は謙虚に語った
その一打が後に彼を日本、さらには世界のスーパースターへと導いていく
中日の阪神戦における苦戦
一方、中日ドラゴンズはこの年、阪神タイガースとの対戦において明暗が分かれた6月24日から始まる阪神との3連戦を前に、中日は巨人とのゲーム差が9.5、ヤクルトとの差が0.5である3位に位置していた
この巨大なゲーム差の一因が、阪神戦での成績にあった
中日はこの至近域で、阪神に対し5勝5敗であるのに対し、巨人は8勝3敗、ヤクルトは10勝4敗と、阪神に対して対策を整えてきたにもかかわらず、勝率5割を維持することが難しかった
キャンプからの虎対策
中日はキャンプ初期からスコアラーを派遣し、阪神の状態をリサーチするなど虎対策に力を入れてきたしかし、その相性の悪さは簡単には解消できず、初戦では仲田幸司に完封を食らい、勝率が5割を割り込む事態となった
高木守道監督は、「昨日(15安打)の今日でコレじゃあ、乗れないわな」と苦悩を滲ませた
彦野利勝の逆転3ラン
中日は翌日に挽回のチャンスを得た7回に代打で登場した彦野利勝が、タイミングを見計らい振り抜くと、打球は左中間席に飛び込む逆転3ランとなり、チームを5割の壁に引き上げる貴重な一打であった
「チームも点が入らなかったけど、逆に言えば誰かが1本打てば…その役目が回ってきただけですよ」と彦野は試合後に語り、チームの勝利の決め手となった
巨人の独走と中日の課題
一方、横浜では巨人が独走態勢を築き、長嶋茂雄監督が自ら先制適時打を放ったり、スクイズを決めたりするなど、勝利に向けた集中力を見せつけていたこうした中、今後の阪神戦において中日が巻き返すためには、さらなる強化が求められることが明白である
記事からはイチロー選手の才能と、中日チームの阪神戦での苦戦が浮き彫りになっている。若き天才が自身の名声を築き上げる現場と、チームが抱える問題が対照的に描かれ、プロスポーツの厳しさと魅力を感じる内容である。
キーワード解説
- イチローとは?プロ野球選手であり、オリックスに所属していた時期に数々の打撃記録を樹立した選手。
- スコアラーとは?試合前に相手チームの選手や戦術を分析し、その情報をもとに試合を戦うための戦略を計画する役割を持つスタッフ。
- 完封とは?投手が相手チームを一点も得点させずに試合を終えることを指し、特に評価される成績。
- 逆転3ランとは?3人のランナーが塁にいる状態で打者が本塁打を放つことにより、一度の打席で3点を得点すること。

