この瞬間を待ちわびた浦和実の選手や関係者は、さいたま市内の校舎内に設けられた大型スクリーンを通じて選考委員会の中継を見守っていました
関東地区では3番目に同校の名が呼ばれると、一斉に拍手が沸き起こり笑顔が広がる光景が見られました
浦和実を1988年から率いている辻川正彦監督はその時の感情を言葉にできず、30秒以上言葉を詰まらせ、嬉し涙を流しました
「本当に長かったです
やっときょう決まりました
選手の皆さん、本当にありがとう」と語り、心の内を表しました
これまで浦和学院、花咲徳栄、春日部共栄、聖望学園など埼玉の強豪私学に阻まれ続けていた浦和実は、ついに厚い壁を乗り越えたのです
その場には同校のOBであり、巨人やロッテでプレーした小原沢重頼コーチもいました
彼は昨秋の関東大会での4強入りから出場が期待されていたものの、発表まで落ち着かなかったと振り返ります
「関東大会が終わってから非常に長かったなというのはあります
感慨深いというか、OBとしての喜びもあるし、指導者としての喜びが重なっています」と話しました
小原沢コーチは、浦和実から城西大学を経て1991年に巨人にドラフト2位で入団
その後、97年までプレーし、98年にロッテに移籍し引退しました
引退後は、明星大学や城西大学の監督を経て、2020年に母校のコーチとして戻り、22年春からは1年間監督として指揮を執り、現在は投手を中心に指導しています
小原沢コーチは「選手にヒントを与え、解答はそれぞれが出す」という自主性を重んじた指導で、チームの躍進につなげています
エース左腕の石戸颯汰投手(2年)は中学時代から注目されており、176センチ、64キロの体を使った独特な投球フォームを持っています
彼は最速120キロの速球を投げ、変化球の緩急で打者を翻弄します
昨秋の関東大会では準々決勝で156球を投げ4安打完封、準決勝でも134球を投げて8回3失点と好成績を残しました
石戸は、「一つ一つのボールの精度であったり、ピンチでも平常心でいられて、ベストパフォーマンスできるというところは負けません」と真剣な表情で語りました
甲子園では健大高崎の石垣や横浜の織田、奥村、東洋大姫路の阪下などの本格派が注目される中、変則左腕の石戸がどれだけ通用するのか期待されています
小原沢コーチも、「140キロ、150キロの投手は少ないが、124、125キロならどこの高校も勇気、希望を持てる」と語り、石戸の成長に期待を寄せています
春の大会へ向けて、再び教え子が聖地のマウンドで躍動する姿を心待ちにしている様子です
浦和実の初の甲子園出場は、長い歴史を持つ学校にとって重大な瞬間です。監督や選手が涙を流す姿は、勝負への強い思いを感じさせました。特に小原沢コーチの指導方針が成功の鍵となっている点が印象的です。今後の試合が楽しみです。
キーワード解説
- センバツ高校野球大会とは? 春の高校野球選手権大会で、全国の高校が集まるお祭りであり、選手たちが夢を育む大切な舞台です。
- エースとは? チーム内で最も実力のある投手で、重要な試合で先発する役割を担う選手のことを指します。
- 自主性とは? 自分で考え行動することを意味し、指導者が選手に自らの力で成長してもらうために重要な考え方です。

